ものがたり

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第7話「歌隠」監督・坂本太郎 脚本・大西信介

カノンを「だいちゃん」に迎え入れたタイヘイ。
しかし、「いのりうた」を盗作されたことから、カノンは素直に歌に向き合うことができずにいた。

それを知ったタイヘイは、0℃を元凶と考え、大学に向かい、そこでサキと出会う。

サキに詰め寄るタイヘイ。盗作の事情を知らなかったサキは、突然の疑惑に驚くが……。

『大魔神カノン』四方山話

サキこと夏菜さんのこと

「もし、私に興味があったら、次、また呼んで下さい」――割とぶっきらぼうにそう言うと、彼女はオーディションの部屋から出て行きました。

今でも鮮明に覚えています。一次オーディションでの夏菜さんは、決して笑顔を見せず、構えた感じで、その場に臨んでいました。その時の彼女のありさまは、両隣でオーディションを受けている人たちを緊張させるほどのものでした(^^;) 立ち会っていた鈴村監督も、そのハードな立ち居振る舞いに少々困惑気味でした。
後で聞けば、控え室で待つライバルたちのピュアピュアでブリブリした感じに違和感を覚え、「おもねる姿勢」、「装う態度」を一切せず、一か八か、無口でいることでインパクトを残そうと思ったそうです。結果的に、そんな彼女の思惑は功を奏することになったわけです。

彼女の中にあるもの――それは揺るぎない闘志や妥協を許さない心なのかもしれません。おそらく彼女は自分自身の弱点を知っているんだと思います。だからこそ強くあろう、と自分を追い込んでいくのでしょう。
挫折、焦燥、逡巡、克己。強く、高く飛ぶことを目指す、夏菜さんの熱意と決意は、きっと、サキをサキらしいものにしてくれると思い、0℃の2代目ボーカル役を託しました。

彼女は、このサキ役と並行して2011年に公開予定の映画『GANTZ』のヒロイン役にも取り組みました。
着実に前へ進んで行く夏菜さん。
そして、彼女は、ついこの間、5月23日に21回目の誕生日を迎えました。遅まきながら、誕生日おめでとう!!

ショウタこと鈴木福くんのこと

ウェブ上では専ら“テレビバエ”の愛称で親しまれつつある(>∀<) テレビのオンバケ、ショウタくん。
確かにテレビをモチーフにしてデザイン化していく時に、わざわざ2つのブラウン管を “両目風”にしてあるのは、『仮面ライダーV3』(1973)に登場したテレビバエ(敵の怪人)の影響があったと言わざるを得ません(≧∀≦)

それはさておき、その人間体を演じてくれている鈴木福くんは、現在5才で保育園の年長さん。
オーディションを終えた坂本監督に「福くんしかいない!」と言わせたチビアクター。決め手は「昭和っぽさ」でした。
今時の子役の子たちは、みんな結構“おしゃれさん”で、都会的な感じ。
そんな中にあって福くんは素朴で、山里と馴染みそうな雰囲気を持っていたのです。

元気いっぱいに野山を駆け巡りそうな福くんの好きなものは『仮面ライダー』。
「俺、参上!」と『仮面ライダー電王』の決め台詞を連発しながら、スタッフやキャストの前で、見栄を切ってくれます。福くんの健気ななりきりぶりを見て、スタッフやキャストの顔には自然と笑みがこぼれるのでした。
最近では『ネオソフト』や『オヤスミマン』などのCMでも活躍している福くん。今後が大注目のチビッコスターです。

坂本太郎監督のこと

第7話・第8話の演出は、第1話・第2話と同様、坂本太郎監督にお願いしました。坂本監督は、今年70歳になる大ベテランですが、フットワークも軽く、いわゆる“ベテランかぜ“みたいなものをこれっぽちも吹かせない“高齢の青年”のような方です。
多くの人から「太郎さん」と呼ばれているあたりにも、坂本監督の垣根を作らない人柄が現れているような気がします。

そんな太郎さんの演出スタイルは自然体。気負わず、奇を衒わず、変に端折らず、真面目にストレートに撮っていきます。
一方で、長く東映で “特撮もの”や“アクションもの”にも携わってきたことから、非日常的でテンションの高いシチュエーションの演出法や、それに関わる技術にも対応しちゃう方なのです。
本作のように、ドラマ的な流れとジャンル的なアクセント、日常的風景と非日常的風景とが混ざり合っている作品では、太郎さんの経験に基づくバランス感覚が欠かせないところです。

因みに太郎さんは、たまに「プッ」とか「プリッ」と屁をこいて周囲を和ませたりします。お茶目な太郎さんの人肌の演出を今後もお楽しみ下さい。

オンバケ考察(その1)

本作は『大魔神』のリメイクではあるのですが、同時に『妖怪大戦争』の要素もリミックスして作ってあります。
妖怪達の中で一番初めにデザインされたのがタイヘイでした。その頃には、まだ妖怪が「人に愛された××の転生」という設定になっていなかったこともあり、タイヘイは大魔神を等身大スケールにしたようなイメージのキャラクター(大魔神ジュニア)として描かれていました。その後に妖怪=オンバケという設定が出来て、タイヘイは「兜のオンバケ」として仕切り直され、デザインされていきます。

タイヘイの仲間ということで、魚、テレビ、傘、釜、ピアノ、消火器、猿など、様々な器物や動物をモチーフにしたオンバケたちがデザインされていきました(左上は企画書用イラストラフ)。
彼らオンバケは、人知れずこの世に生を受けては、人に恩を返すため、人の側にやってきて何かしらの人助けをしてくれる存在です(左中はオンバケ転生イメージ案)。
特に困った人をみかけると気が気ではなくなってしまうのが彼らだと思うのですが、タイヘイの場合は、ちょっと張り切り過ぎのような気もしています(^^;
日本各地にいるオンバケたちは、基本的にイパダダが出ていない時は、そんな風に人助けをしているという設定です。

因みにタイヘイは、普段は山形の山奥で、おばあちゃんたちの農作業を手伝ったりしている地元のアイドル的存在。イケチヨは、宮城で心身の弱った人々を癒している女神的存在ということになっています。2人とも東北を代表するオンバケとして、オンバケ界では名が通っているようです。

イパダダ考察(その2)

オンバケこと心優しき九十九神(つくもがみ)を困らせるもの、悪霊イパダダ。
前項でも書かせてもらいましたが、本作は『妖怪大戦争』のリミックス的側面も持っていたことから、イパダダに当たる存在は、当初、古代から甦った大妖怪・ダイモン(旧『妖怪大戦争』の敵役)とされていました。大魔神(ブジンサマ)が倒す相手として設定されていた2010年版のダイモンは、テーマ的な部分が練られるに従って、その出自を完全に空想的なものから、人間に由来するものへと変えていきました。

人から人への温もりのバトンタッチが、図らずもなされなかった場合、人は「人から遠い存在」になってしまうのではないか。人が愛情(思い)をかけた器物や動物が転生した、言わば「絆の産物」がオンバケたちであるのに対して、イパダダは「断たれた絆の産物」という意味が与えられていったのです。
現代社会に潜む不幸な事件の背景にあるものは、複雑で根深くある一方で、シンプルで暖かい人間的な気持ちによって解決の糸口が見つけられないものか、と子を持つ親の一人として常々考えています。

因みに2010年に命を得たイパダダこと、死刑囚・冴木賢人を演ずるのは滝直希さん、その母を演ずるのは月船さららさんです。お二方に関しては、また後日、詳しく触れさせて頂きたいと思っています。

クリック!ファンタスティック

第7話 『クリック!ファンタスティック!』に関しまして

今回の『クリック!ファンタスティック!』は、臨時休載とさせて頂きます。楽しみにして頂いている皆様には大変申し訳ございませんが、次回の更新に、ご期待下さい!

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